見えにくくなった、防具づくりの現場
― 全日本武道具・日本剣道具製作所に聞く
いま、防具づくりの「全体像」が見えにくくなっています。
その背景と、私たちが守り続けているものづくりの考え方を、静かに言葉にしました。
――まず、現在の剣道防具を取り巻く状況について教えてください。
いまの日本では、
数十人規模で稼働している剣道防具工場は、ほとんど存在していません。
日本製防具市場の約80%は、
日本剣道具製作所を有する宮崎県で製作されています。さらに、防具市場全体で見ても、
全日本武道具・日本剣道具製作所の防具が
およそ20%を担っていると言われています。
一見すると多い数字に見えるかもしれません。しかし見方を変えれば、
日系企業が自社で製作している防具は、市場全体の20%しかない
という現実でもあります。
現在、日本で販売されている多くの防具は、海外企業からの仕入れに依存しています。
そのため、どのような職人が、どのような環境で防具を作っているのか――
その全体像に触れる機会は、ほぼありません。
多くのメーカーや販売店が日常的に接しているのは、
完成した製品、あるいは一部の工程だけです。防具づくりの全体像が、少しずつ見えにくくなっている。私たちは、そう感じています。
また、市場に流通する防具の多くは海外企業がつくる製品が中心です。
これは時代の流れであり、合理的な選択でもあります。しかしその一方で、
作り手の姿や想いが見えにくくなっている側面もあると考えています。
――その中で、御社が大切にしていることは何でしょうか。
特別なことではありません。
ただ、
誰が責任を持って作っているのかを、はっきり示せる防具でありたい。
その思いだけです。
素材を選ぶこと
形を考えること
一つひとつを仕上げていく工程
最終的な品質の確認
そのすべてに、自分たちの名前で向き合う。
私たちは、その積み重ねを続けてきました。
――防具にとって大切な価値とは何だとお考えですか。
防具は、単に使うための道具ではないと思っています。
稽古の時間。重ねてきた努力。ときには悔しさや喜びも含めて、
長い年月を共に過ごしていく存在です。
だからこそ――どこで作られたか以上に、誰が思いを込めて作ったのか。
それが静かに伝わるものでありたい。私たちは、そう考えています。
――これから先、どのような防具づくりを続けていきますか。
大きく変わることは、おそらくありません。
これまでと同じように、目の前の一具一具に向き合い、
時間をかけて丁寧に仕上げていくこと。その積み重ねの先に、使い手にとって意味のある一具が生まれていくのだと思います。
派手さはありません。けれど、静かに続いていく仕事です。
私たちはこれからも、その役割を変わらず担っていきたいと考えています。
――最後に、これから防具を手に取る方へ伝えたいことはありますか。
特別な言葉はありません。
これから防具を選ばれる方が、その一具と長く向き合い、稽古の時間を重ねていく中で――
ふとした瞬間に、作り手の存在を静かに感じていただけたなら。
それ以上の喜びはありません。
防具づくりは、決して目立つ仕事ではありません。
しかし、見えない場所で積み重ねられてきた時間と技術が、
使い手の歩みを支えていきます。その関係は、これから先も変わらないと信じています。
私たちはこれからも、変わらず――
一具一具に向き合い続けていきます。
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