―― 全日本武道具、月間製造数と信頼
品質を守るという選択 ―― 全日本武道具・日本剣道具製作所の現在地 「正直、簡単な決断ではありませんでした」 そう振り返るのは、全日本武道具グループの現場を統括する立場にある担当者だ。 前年度、日本剣道具製作所および全日本武道具の両工場では、10月・11月の二か月間、新規注文の受付を停止するという異例の判断が下された。 想定を大きく上回るご注文をいただいた。その事実に対する感謝の思いは、言葉では言い尽くせないという。 「ただ、私たちの防具づくりは、いまも手仕事を軸にしています。どうしても生産キャパシティには限界があります」 受注量が生産能力を大きく上回り、このままでは工場全体の整理が必要になる。 何より、品質を維持できなくなる――そう判断せざるを得なかった。 「苦渋の決断ではありましたが、品質を守るための選択でした。 ご理解いただければ、これほどありがたいことはありません」 安さの時代を、越えて コロナ以前の防具業界を振り返ると、 「安ければ、品質はある程度でいい」 そんな空気が市場全体を覆っていた時代があった。 各メーカーが価格競争を繰り広げ、いかに安く売るかが重視される流れの中で、全日本武道具グループは、あえてその土俵には立たなかった。 「品質を崩さないこと。 安売りに手を出さないこと。 それだけは、続けてきました」 正直に言えば、厳しい時代だった。 安価な商品が市場に溢れる中で、価格を理由に選ばれないことも少なくなかった。 「それでも、芯を曲げることはできませんでした」 時代が、追いついてきた コロナが明けたいま、市場の空気は確実に変わりつつある。 「安さ」よりも、 「安心できる品質」 「長く使える道具」 「使いやすさ」 そうした価値が、あらためて見直される時代へと移行している。 苦しい時期も歯を食いしばりながら、 自社工場で、誠実に防具を作り続けてきた。 その選択が間違っていなかったと、 ようやく実感できるようになったという。 フル稼働が示す信頼 剣道具には、ランドセルと同じように、 入学・新学期シーズンという「書き入れ時」がある。 しかし、全日本武道具グループの工場は、 特定の時期に限らず、一年を通してフル稼働している。 「これは本当にありがたいことです。 同時に、多くの方からの信頼の証だと感じています」 現在、二つの自社工場をフル稼働させ、月に約700組の防具を製造。 さらに提携工場でも、月200~300組を生産している。 その製造数と販売数量は、 日本でも群を抜く規模と評されるまでになった。 数量だけではない、という誇り 業界内では、 「防具製造数量はダントツ」 「品質は世界最高水準」 といった評価の声も聞かれる。 しかし、彼らが本当に誇りに思っているのは、 単なる数字ではない。 「日本の武道具業界で、 自社工場を運営し続けている数少ない存在であること。 その自信と信頼こそが、私たちの財産です」 職人は宝 全日本武道具グループの社訓は、 「職人は宝」。 防具づくりの中心にあるのは、 機械でも、効率でもない。 人であり、手であり、積み重ねてきた経験だ。 「派手なことはできません。 それでも、シンプルに、誠実に。 剣道と真剣に向き合う皆さまのために、 信頼される防具を作り続けていきたい」 その想いは、これからも変わることはない。 (取材・文= 広報部)
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